キャスティングの「競合」とは?種類・費用・契約で注意すべきポイントを解説

芸能人やインフルエンサーを広告に起用するとき、「競合」や「競合排除」という言葉を耳にすることも多いのではないでしょうか。
実際の現場でもよく使われる言葉ですが、「どこまでを競合と見なすか」「契約書にはどのように明記するか」といったルールが曖昧なまま話が進んでしまうケースも少なくありません。
その結果、起用したタレントが過去に似たジャンルの広告に出演していたことが後から判明し、契約トラブルにつながるケースもあります。こうした事態を防ぐためには、競合の考え方や契約時の注意点を事前に把握しておくことが重要です。
この記事では「競合」の意味や種類、契約時の注意点まで、分かりやすく解説していきます。キャスティングを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

キャスティングにおける「競合」とは|出演バッティングを防ぐルール

キャスティングにおける「競合」とは、起用したタレントやインフルエンサーが、同じ業界の他社広告に出演するのを避けるために設けられるルールです。
たとえば、飲料メーカーA社のCMに出演しているタレントが、同じカテゴリの競合企業であるB社の広告にも登場すると、視聴者は混乱し、どちらのブランドなのかが分からなくなります。
このような事態を防ぐため、企業は契約するときに「競合排除」や「競合制限」といった条件を設定します。制限の範囲は、特定の業種を対象にしたり、出演期間を定めたりするケースが一般的です。
競合の種類と契約範囲の考え方
キャスティングにおける競合は、主に以下の3種類に分類されます。
- ・商品競合
- ・企業競合
- ・特定企業競合
どの範囲を競合と捉えるかによって、出演に関する制限や契約条件に影響が出てきます。そのため、契約のときは、制限の範囲を明確に定めることが重要です。

商品競合
商品競合とは、同じカテゴリの商品を対象にした競合制限です。たとえば、シャンプーA社の広告に出演したタレントがB社のシャンプー広告にも登場した場合、ブランドの違いが曖昧になり、商品の差別化が難しくなります。そのため、同一カテゴリの商品への出演は制限されるケースが多いです。
このような競合制限は、化粧品や飲料、家電など、カテゴリが明確なジャンルでよく見られます。
ただし、カテゴリの線引きは企業によって異なり、「同じシャンプーでもノンシリコンとオーガニックは別物と考える」という判断が入る場合もあります。
どこまでを競合と見なすかは、案件ごとに考え方が分かれるポイントです。起用側と出演側で事前に確認し、条件をすり合わせておくことが大切です。
企業競合
企業競合は、同じ業界に属するすべての企業を対象にした、広い範囲の競合制限です。たとえば、「家電メーカー全体の広告には出演できない」といった契約が該当します。
このような制限を設けることで、ブランドの独自性を保ち、競合他社とのイメージの混在を防ぐことが可能です。ただし、対象範囲が広くなるため、タレントやインフルエンサーの活動の幅が狭まり、キャスティング費用が高くなる傾向があります。
よくあるケースとして、認知拡大を目指す大規模キャンペーンや、業界内でのポジション強化を目的とする広告において、企業競合が採用されます。
そのため、企業競合を設定するときは、制限の影響やコストとのバランスを見ながら、起用側と出演側の双方で条件をすり合わせることが重要です。
特定企業競合
特定企業競合は、特定の企業だけを出演NGとする競合制限です。たとえば、「A社の広告には出てほしくないが、それ以外の同業他社は問題ない」といった要望に対応する形で設定されます。
業界内で明確なライバル企業がいる場合や、過去に競合関係でトラブルがあった場合などに採用されることが多く、ピンポイントな制限が可能です。
企業競合や商品競合と比べて制限範囲は狭く、タレント側の活動への影響も比較的少ないため、柔軟な契約が組みやすい特徴があります。
ただし、契約書で対象企業を明確にしておかないと、あとから解釈にズレが生じるリスクもあるため注意が必要です。企業名や範囲は、できるだけ具体的に記載しておくようにしましょう。
キャスティング前に確認したい「競合出演歴」

タレントやインフルエンサーを起用するときには、候補者が過去にどの企業や商品とかかわっていたかを事前に確認しておく必要があります。とくに同じ業界の競合広告に出演していた場合は、起用条件と競合制限がぶつかる可能性があるため、慎重なチェックが欠かせません。
出演歴を確認する方法は、所属事務所やキャスティング会社へのヒアリングが基本です。あわせて、SNSや過去の広告事例、Webメディアの記事なども参考になります。
オファー時には、あらかじめ「いつから・どの業種・どの企業まで出演NGとするか」といった競合制限の条件を提示し、問題がないかを確認します。出演歴のチェックは、過去の出演歴を把握するだけでなく、契約条件を整えるうえでも大切な工程です。
この確認が不十分だと、契約後に競合出演が発覚して条件の見直しや調整が必要になるケースもあります。トラブルを防ぐためにも、できるだけ早い段階でチェックしておくことが大切です。
※タレントのキャスティングについて詳しく知りたい方は、「タレントのキャスティングとは?タレントを起用するメリット・デメリットやキャスティング会社を紹介」の記事もご覧ください。
競合管理をしないリスク|信用低下や賠償トラブル

タレントの競合管理を怠ると、ブランドの信頼性が損なわれ、大きな損害につながる恐れがあります。
同じ出演者が複数の競合広告に登場すると、企業イメージの混乱を招きやすく、消費者に「どのブランドの顔なのか」が伝わりにくくなるからです。結果として、広告の効果が弱まるだけでなく、企業そのものの信用にも悪影響を及ぼしかねません。
たとえば、ある飲料ブランドが起用したインフルエンサーが、数週間後に別の飲料会社のプロモーションにも出演していた場合、消費者の中には「一貫性がない」と感じる人も出てくるでしょう。もし契約上で競合出演が禁止されていたにもかかわらず、契約条件が守られていなければ、違約金や損害賠償が発生することもあります。
こうしたトラブルを防ぐには、キャスティング段階での競合管理が不可欠です。リスクを見過ごさず、あらかじめ明確なルールを定めることがブランドの信頼維持につながります。
競合制限によるキャスティング費用への影響

競合制限を設けると、キャスティング費用が高くなる傾向があります。タレントやインフルエンサーが同業他社の広告に出演できなくなるため、活動の幅が狭まり、その分の対価として出演料が上乗せされるからです。
たとえば、飲料メーカーの広告に出演する場合、一定期間ほかの飲料ブランドの広告に登場できないといった条件が契約に含まれることがあります。このような制限があると、新たな広告案件の機会が減るため、出演者にとっては大きな負担となります。
競合制限がない契約と比べると、費用が1.5倍程度に増えることも少なくありません。制限の範囲が広くなるほど費用への影響も大きくなるため、広告主はプロモーションの目的や予算に応じて、制限内容を慎重に検討する必要があります。
契約書で「競合排除」を設定するときの注意点

タレントやインフルエンサーを起用するとき、「競合排除」を契約書に明記しておくことが重要です。起用後のトラブルを避けるためにも、内容はできるだけ具体的に記載する必要があります。
とくに注意すべきポイントは、「どの企業や商品を対象にするのか(範囲)」「どのメディアに出演できないのか(媒体)」「いつからいつまでか(期間)」の3つです。これらが曖昧だと、後になって「これは競合にあたるのか?」という解釈の違いから、契約違反や損害賠償などのリスクにつながることがあります。
たとえば、「飲料業界のテレビCMとSNS広告すべてに1年間出演NG」といったように、対象を明確にしておくことがトラブル防止につながります。
競合排除の条件は、企業と出演者の双方が納得できるよう、具体的かつ丁寧に取り決めることが大切です。
まとめ
タレントやインフルエンサーを広告に起用する際は、「どこまでを競合と見なすか」を明確にしておくことが重要です。同じ業界の別企業の広告にも出演してしまうと、ブランドの印象がぼやけたり、視聴者に混乱を与えたりする恐れがあります。
こうしたリスクを防ぐため、広告契約では「競合排除」や「競合制限」といったルールを設定するのが一般的です。制限の範囲は「商品カテゴリ」「業界全体」「特定企業」などさまざまで、内容によってはキャスティング費用にも影響します。
また、事前に出演歴を確認し、自社の競合条件と重複しないかチェックしておくことも、契約トラブルを防ぐうえで欠かせません。契約書には、制限の対象・期間・媒体などを具体的に記載し、曖昧さを残さないようにすることが大切です。
クロスアイでは、競合排除の設定や出演歴の確認など、キャスティングにまつわる細かな対応や調整もまとめてサポートしています。「どこまでが競合になるのか分からない」「条件整理が不安」といった場合でも安心してご相談いただけます。
キャスティングを検討されている方は、ぜひお気軽にクロスアイまでお問い合わせください。